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ローディーに聞いてほしい自転車用チェーンの小話

 

理系ではないのですが、元々機械部品メーカーで営業をしていたこともあり、普通の人よりも機械部品に詳しいと自負しています。

機械部品といっても多種多様で、回転寿司のコンベヤ(くるくる回るやつ)を例にとると、直接お寿司が乗った皿と触れる水平搬送用のチェーンに、チェーンを引っ掛けて回すためのスプロケット、シャフトを支えてコンベヤを滑らかに回すためのベアリング、モーターの回転運動をスプロケットに伝えるためのシャフト、回転運動を生むためのモーターなど、たくさんの部品から構成されています。

今回は元機械部品営業マンローディーの立場から、ロードバイクに乗る人向けに自転車用チェーンの話をしたいと思います。

 

 

チェーンが黒ずむ理由

チェーンが黒ずむ理由や伸びる理由を理解するにはチェーンの仕組みを知る必要があります。

チェーンはピン、ローラー、インナーリンク、アウターリンクの4部品から成り立っています。

(一般産業用だとここにブシュと呼ばれる部品も加わり、構造も若干異なりますが、ここでは内プレートとブシュが一体化した、下記図のような自転車用ブシュレスチェーンに絞って解説していきます。)

 

引用:bike.shimano.com

 

自転車が進む仕組みを見てみると、最初にペダルを漕いで、この時に発生する力をクランク、チェーンリング、チェーン、後輪スプロケット、後輪ホイールの流れで伝達させ、タイヤを回転させています。

そして、チェーンがチェーンリングとスプロケットに噛み合った時に、プレートとピンが擦れ合います。

金属部品ですから、そのままだと部品同士が擦れ合って徐々に削れていきます。

業界ではこの動きを摺動(しゅうどう)と呼んでいます。

後述しますが、ピンとリンクプレートの穴が摩耗するとどんどんチェーンが伸びていきます。

なので、定期的にオイルを注油をして、リンクプレートとピンの間の摩擦をなるべく減らす必要があります。

ただし、オイルは万能ではありません。

摩擦をゼロにすることはできませんし、雨や風でオイルが流されたり、オイルが砂埃を吸うことでやすりのような状態になり、逆に部品の摩耗を促進してしまうようなこともあるでしょう。

 

また、シマノのチェーンの場合は105グレード以上のチェーンに超低摩擦表面処理が採用されています。

これにはオイルと同じく、部品の摩耗を減らす効果があります。

インナーリンクとピンはチェーン伸び、すなわち寿命に直接影響しますから、この両部品への表面処理は特に有効です。

この両部品に表面処理がされているのはアルテグラグレードとデュラエースグレードですね。

 

逆に言えば、ローラーやアウターリンクへの超低摩擦表面処理は内プレートやピンほど重要ではありません。

それならアルテグラでいいのでは?とならないように、デュラエースのみ中空ピン化して軽量にすることで差別化を図っています。

軽さを追求するレース志向のローディーなら高くてもデュラエース買うでしょ?と言わんばかりで、よく考えられた商売だと思います。

 

きちんと注油したチェーンであっても少しずつ摩耗が進んでいきます。表面処理も同じく、使っていくうちにコーティングが剥がれて摩耗が進みます。

この時に金属が削れた粉がオイルに吸われて、砂埃なども混ざり、黒いダマのようになっていきます。

これがチェーンの黒ずみの主な原因です。

 

チェーンが伸びる理由



絵が上手ではないことは承知の上で、上の図が初期の状態だとしましょう。

チェーンとスプロケットが噛み合う回数が増えてインナーリンクとピンの摩耗が進むと、下の図のような状態に変化していきます。

こうなっていくと、ピンとインナーリンクの穴の摩耗分だけ隙間ができて、この隙間の分だけチェーンが伸びることになります。

これがチェーンが伸びる仕組みです。

 

メンテナンス

これまでの説明をベースに、チェーンのメンテナンスをする時に気を付けることをお話ししていきます。

まず洗浄時に意識したいのは、一番落とさなくてはいけないのはインナーリンクとピンの間にたまった金属粉や砂埃だということです。

これは金属粉や砂埃がたまっていると、ヤスリのようにザラザラした面でピンやインナーリンクを擦り続けるような状態になり、どんどん摩耗が進むからです。

なので、チェーン洗浄時にディグリーザーをシュッとかけて水で洗い流すだけでは不十分で、ブラシでチェーン内部の汚れを落としたり、ディグリーザーに漬け置きして内部の古いオイルと一緒にゴミを出し切るのが有効です。

 

注油時も同じように、一番意識するのは内プレートとピンの間にオイルを入れることです。

プレートに油を挿したり、溢れるくらいドバドバにオイルを挿すと、砂埃を吸いやすくなるので逆効果になってしまいます。

 

しっかり洗浄して、必要なところに必要な分だけ注油する。これが自転車用チェーンメンテナンスの鉄則です。

 

記事が長くなってしまったのでこの辺にしておきますが、他にネタが思いついたら第二弾もやりたいと思います。